「森本さんは読書が好きなんやてね」

制止する女子生徒に、あたりさわりのない質問だと梁瀬が考えたであろう質問をし、

「はい。今日は放課後、『高瀬舟』の読書会に出席してとてもたのしかったです」

と、生徒もあたりさわりのない答え方をした。目が合った。

あいだにあるテーブルに腹が立った。

レジスターの目に立つ女教師に森本は頭を下げ、女教師が勘定をしているさい、彼女のうしろに立っていた河村の指先を一瞬、にぎった。

彼もにぎりかえした。



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